命 怖くなり振り返り走り出した。
一生懸命に走り後ろを振り返った。
E そんな・・・
命 すぐ後ろには、三途の川が流れている。
○ 逃げることができないんだ。
命 そうよ。
川を見ながら、後ずさりして驚いた。
E 後ずさりした分、川が寄ってくる。
渡るしかないのね。
命 覚悟を決め川に入った。
川底には、パソコンやスマフォが落ちている。
水の中なのに画面が光り文字が映し出されている。
溺れそうになりながら、必死で泳いだ。
向こう岸に着くと息を切らせながら、岩に座った。
服が濡れていて重いだけでなく寒さに震えた。
ブルブル震えながら周りを見渡した。
手を振っていたお父さんとお母さんの姿はない。
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E あれは・・・
明かり。
誰か居るんだ。
命 薄暗い中、遠くに明かりを見つけた。
立ち上がり走り出した。
一人の老人が、たき火をしている。
息を切らせながら、老人に声をかけた。
E すみません。
寒くて凍えそうなんです。
たき火に当たらせてもらえませんか。
老 びしょ濡れじゃな。
当たりながら服を乾かすといい。
命 たき火が暖かく落ち着いてきた。
E ここは何処ですか?
老 死後の世界じゃ。
E 地獄・・・
老 地獄ではない。
天国と地獄の境目と言った方が分かりやすいかな。
E 死んだら全てなくなります。
地獄や天国なんて無いと思います。
私は、ここに居ます。
死んでいません。
老 肉体はいずれ死を迎えるが魂は、死ぬことなどない。
自分の葬式や仏壇を見たじゃろう。
自分の肉体が死んだことを知らせるために行われるのが葬式じゃ。
魂だけになると生きている人間に声をかけても聞こえない。
E 私、死んだのですか?
老 そうじゃ。
肉体が死んだんじゃ。
魂は死なない。
そなたが渡ってきた川は、三途の川。
聞いたことがあるじゃろう。
E 死んだ人が渡る川・・・
老 そうじゃ。
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命 物が全てで死んだら無になると考えてきたEさんは、老人の言葉が信じられない。
○ 無になることがなく自分がいるからだね。
命 そうよ。
○ 葬式を見て三途の川を渡ったのに信じられないんだ。
命 そんな人が沢山いるの。
○ 学校で教えてくれたらいいのに・・・
命 無理だって知っているでしょう。
○ ・・・
命 歯がゆく思わないで。
Eさんは、学んでいるのよ。
○ そうだね。